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2話「色の名前」

初めて見た色が 今一緒にいる

けれども

私が 死 ぬ 前 にいた色は

ここには いない


あの色は だれなのだろう?


「今日はいい天気ですよ」

ナギさんが、部屋のカーテンを開けながら言う。
私は近くにある椅子に座って、視線だけそちらを向いた。

淡くも眩しい光の線が、窓から入って来るのが見える。

「風も気持ち良さそうですね‥‥。」

「ええ、きっと。今日は外に出ましょうか?」

「‥‥いいのですか?」

いつもなら、外に出るだなんてとんでもないと言われてしまうのに‥‥。

「お庭まででしたら。」

お庭‥‥

「‥‥はい‥‥」

歩くことすら覚えたての私には、それで充分なのかもしれないけれども‥‥もう少し遠くへ行きたい。

そう思いながら、私はナギさんに手を引かれて外に出る。

庭には草木が多くあり、どれも手入れが行き届いているように見える。
おそらくナギさんが丁寧に手入れをしているのだろうが
他にも仕事があるのにこれだけの植物の手入れを一人でするのは大変だ。

「空気が美味しいですね。」

「‥‥はい」

私は小さな椅子に誘導されて座り、木や塀に留まる鳥を眺めている間に
ナギさんはテーブルを挟んで正面に座ると、慣れた手つきで紅茶を煎れはじめた。

「どうぞ」

数分して、ナギさんから紅茶の入ったティーカップを差し出される。

「‥‥ありがとうございます‥‥」

ナギさんの煎れる紅茶は薄紅色で、私にとってはとても熱い紅茶。

「‥‥‥‥。」

「すみません。まだ加減がわからないのです。
今までは誰に煎れても完璧だと言われていたのですが‥‥」

「いえ‥‥私が他の方と、違い過ぎるから‥‥」

私には体温がない。

血は流れているのに‥‥

私には、体温がない。

「デェア(発音はデイア)様」

「なんだか、慣れないですね‥‥その呼び方も‥‥」

「何も覚えていないのですから、仕方ありませんよ。」

「‥‥‥‥。」

私は、私の名前を知らない。

ナギさんに初めて呼ばれた名前
“パルデェア(発音はファルデイア)”も、正確には名前ではないとう。

「ナギさん‥‥」

「はい」

「ナギさんは‥‥私とは、どのような関係だったのでしょうか‥‥」

私が見たのは、初めて外を見たあの日。

でもこのナギさんは、私をもっと前から知っているという。

「私は、あなたが生まれてからずっとあなたのお世話係でしたよ。」

「生まれてから‥‥ずっと‥‥」

「ええ。生まれてから、ずっと。」

‥‥私は、本当に何も覚えていないだけ?
私は、あの日まで白以外の何も知らなかったはずなのに‥‥

「それと‥‥」

「?」

「い、いえ‥‥すみません。改めて言うのは恥ずかしいですね。」

話している間に紅茶は程よい温かさになったため、
私はやっとカップに口をつけることができるようになった。

「あの‥‥」

「はい?」

できれば私と最後に一緒にいたもう一人のことを聞きたい‥‥
聞きたいけれど、怖くなって聞けない。

今なら、あの赤黒い色が 血 であることが解るから。

「紅茶‥‥美味しいです‥‥」

何度も聞きかけて やめて
結局、飲むことができた紅茶の感想を言う。

「‥‥。ありがとうございます。」

それを聞いて
ナギさんは少しだけ顔を赤く染めた。

そんな 日常。

(‥‥今日は外だけれども。)



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