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○第三十一話「動き出す 後編」

おかしな情報の出所はパージだった。
でも、何故パージ?

そしてその内容は‥‥

最も怠惰(たいだ)で、強欲で、嫉妬深く、
暴食で、傲慢(ごうまん)で、憤怒の心を持ち、
なんと色欲が強い者が、最も次のUVに相応しい

‥‥と、いうものだった。

ただの“大罪”じゃないか‥‥!!






因みに大罪にはこんなものもある。
・遺伝子改造
・人体実験
・環境汚染
・社会的不公正
・貧困
・過度な裕福さ
・麻.薬.中.毒

‥‥こちらは正直、今の全コンプレックスに該当している。
他にもあるけれど‥‥言い出すときりが無い。
ただ‥‥それも、今のコンプレックスに殆ど該当している。

だけど‥‥大罪は次のUVには関係していない。
少なくとも、ιのコンプレックスでは関係していない‥‥はずだ。

αやοコンプレックスでは、それが普通なのだろうか?
それとも、ιも本当は‥‥

少しだけ、不安になったのは気のせいではない。

僕はレイモンド社長と共に、従業員を隔離した部屋に行くと
一纏めにされていた機器の中から幾つかを拾って押収して、その持ち主を拘束した。
(爆発を起こした機器があったので破損している物がほとんどだった。)

そのついでで、偽者の副社長さんも拘束する。
その理由について

「UV様が話したいそうですよ。」

と耳元で言ったら、少し慌てながら了解していた。


一方地下では、膨大な情報を解析し終わったブルータスと
ニイナの隔離に成功した社長さんが合流。

変なデータが見つからなかった事から、ブルータスはそれを破棄して部屋を解放

二人でニイナを拘束して聴取をした後
ニイナが偽者であることが判明してZAPされた。




――――場所変更

「市民ウィン‥‥貴女が何故、此処に呼ばれたか判りますね?」

「ええと‥‥」

侶佳から、偽者だと聞いていた所為か違和感が半端無いと感じてしまう。

私は、無表情に困る偽者のウィンを前に、腕を組んでいた。

「いいでしょう。まずは座って下さい。」

とはいえ、こうしていても自分からは話さないだろう。

私は偽者のウィンを椅子へ誘導すると
ボットに飲み物を持ってこさせた。

とはいっても、普通のホットコーヒーだ。

砂糖もミルクも入れていない。

偽者のウィンは、いただきます。と一言いうと
そっとコーヒーに口をつけた。

‥‥本物のウィンなら、少しはためらう筈だし、それに‥‥

偽者のウィンは、普通に熱々のコーヒーを飲んでいた。

本物のウィンは、猫舌だからこれでもかと言うくらいふーふーしてから
慎重に飲んで火傷をする。

私は、目を細めて偽者を眺めた。

「おいしいです。」

「それは良かったです。」

本物も砂糖すら入れていないコーヒーは飲めるけれど
大抵はミルクをたっぷりと入れて砂糖は絶対に入れない。

でも偽者のウィンは、美味しいと言いつつも、少しだけ砂糖を足した。

おちょくっても面白かったかもしれない。

けれど、本物の安否がはやく知りたかった私は
焦ってしまっていたのだろう。

そして、早々にこの偽者の正体を暴いてやりたかった。

暫くは、無言でのティータイムを過ごす。

偽者のウィンが、何かを言ってくるかもしれないと思ったが
特に向こうから話すことは何も無かったらしい。

ならば、こちらから切り出すしかない。

「市民ウィン、最近の調子はどうですか?」

「調子、ですか?」

「ええ。こちらの世界には慣れましたか?」

「はい。大分慣れました。」

「そうですか。 仕事の方も、捗っていそうですね。」

「喫茶のことですか? お陰様で繁盛していますよ」

「いえ、その他の仕事のことです。」

「‥‥手伝いのことでしょうか?」

「手伝い、ね‥‥」

「‥‥‥‥。」

ふう、とため息をつく私をみて
少し不安げな表情を見せる偽者のウィン。

姿形は粗そのままだ。

これが偽者なら、形態変化をしたのだと普通は思うだろう。

でも、違う。

私は1回だけ聞いたことがある。

οコンプレックスで開発された新しい能力‥‥
そして、それが他のコンプレックスに流出したという情報‥‥
しかし、その能力を使いこなせる市民は、ほんの一握りだと。

その能力は、形態変化に似て非なるもの。
自分が知る限りの“その人”に変化する、恐ろしいものだ。

外見や声は勿論、知る範囲なら性格や癖、能力までもコピーしてしまう。

能力の名前は‥‥HQRP(ハイクオリティロールプレイング)。

知らない範囲は、自分で補うしかないのは欠点だが
その人をよく知らない人は、多少不完全でも信じ込んでしまうだろう。

‥‥この偽者の場合
侶佳や私が相手になることを不運に思った方がよかったかもしれない。

さて、ここで1つ問題がある。

οから流出したHQRPは、ιに来ていないことは調査済みだった。
なら、今此処にその使い手がいるのは何故だろう?

‥‥答えは簡単だ。

この偽者の正体は‥‥

「遠まわしに言うのはもう止します。 貴女は誰ですか?」

「えっ?」

「本物の市民ウィンを、何処へ隠したのですか。‥‥市民ニイナ」

「!!!!」

私がそう声を掛けた瞬間、ぐにゃりと偽者のウィンの姿が歪み
あっという間にニイナの姿になった。

「な、なんでバレたんや‥‥!」

「人を騙る行為、及びミュータント能力をもつ反逆者として貴女を処刑します。」

私は驚きを隠さないニイナに、1発撃ち
ニイナは蒸発して、すぐにクローンが運ばれてきた。

「‥‥なんでや‥‥!!」

「侶佳が近くに居たのが災いしましたね。市民ニイナ。
 ‥‥いえ‥‥もっと別の誰かさん。」

「‥‥へ?」

「あなたは知らないようですから、1つ教えてあげます。
 “旧世界人にはクローンがありません”。」

「え、ええ?!」

「でも、あなたにはクローンがありました。
 旧世界人だと名乗っていたにも拘らずです。」

「そ、そんなん、ιだけかも知れへんやんか‥‥?」

「いいえ。これは全てのコンプレックスで共通しています。
 全コンプレックスのUVが、一致で決めたことなのです。」

「そんな‥‥まさか‥‥聞いてへん!ウチは、ウチは‥‥」

ニイナは混乱したように、頭を抱える。

「あなたは、本物の旧世界人ニイナに化けた、また別の誰かなんです。
 流石に誰かまでは判りませんが‥‥ιに来たのは差し詰め、αのニイナをよく知る人物から
 逃れたかったからというのと‥‥何処から情報が漏れたかしりませんが
 ニイナと同じ旧世界人である、ウィンに近付きたかったからですね?」

「‥‥‥‥」

「ニイナの記憶がそれなりにあったのは、ニイナが来てからまだ日が浅い内に
 あなたがニイナと知り合い、仲良くなり、そして話をしていたからです。
 最初はロマンテクスだったニイナの妄想や戯言だと思っていたのでしょうが
 あなたは次第にニイナの言葉が事実だということに気がついていきました。
 そして、ニイナにはクローンが無いこと、記憶が消えていっていることに気がつかず
 あなたはその能力を使ってニイナに成りすまし、ニイナの不思議な能力を手に入れた。」

「‥‥‥‥」

「元サイオン所属だったあなたには好都合な能力だったでしょう?
 今も元の能力のHQRPも使えるのですから、便利ですよね。」

勿論、全ては私の想像だ。
しかし‥‥粗図星らしい。

ニイナに成りすました誰かは、表情を凍らせていた。

「一つ、あなたには残念なお知らせをしなければなりません」

「‥‥?」

「旧世界人を名乗った時点で、あなたにはクローンがありません。」

「え、でもさっき‥‥いまこうして新しいウチがおるやん!」

「それはαにクローンが1つだけ残っていたからです。
 HQRPで変化すれば、例え旧世界人になったとしても
 元の自分のクローンが余っていれば、その分のクローンは使えるのですから」

「じゃ、じゃあ‥‥」

「はい。あなたはその体が最後です。」

「‥‥クローン数の回復、嘘やったんか」

「そうなりますね。」

「そんな、ひどい‥‥ひどすぎるで!」

「私はウィンから忠告を受けていました。そして、私はその上であなたを受け入れました」

「忠告‥‥?」

「あなたは危険な気がする、と‥‥ウィンが言ったのです。
 旧世界人にも時々、不思議な力の持ち主が居たようですね。
 ですが、私はUVですから、あなたのような危険人物が1人増えた所で
 何の問題もないと答えました。‥‥UVですから、市民を不安にさせられません。」

「はあ?言ってること、全くわからへん。UV様、ウチ、わからへん!
 ウチは市民とちゃうん?ここに移住して来て、ιの市民になったんやで?
 そういうこと言うんやったら、ウチのことかて不安にさせたらあかんやん?!」

「そうですね、あなたが本物のニイナだったら手厚くもてなしたでしょう。」

「‥‥‥‥」

「ですが、あなたは立派に反逆者です。今此処でロストさせることも可能です」

「‥‥‥‥でも、出来んのやろ?」

「ええ。市民ウィンの安否と居場所が判りませんからね。」

「ウチに言えと?」

「言わせたい所ですが、どうせ言わないでしょう?」

「なんや、よーわかっとるんやな」

「何十年と、色々な市民を見てきましたからね。」

「‥‥ふん」

ニイナに成りすました誰かは、私から目を逸らす。

「いいでしょう。全力で探させていただきますから。」

「ああ、そうしたらええ。ウチらは全力で阻止したる!」

「ニイナよりも鍛えられた力(看破)が欲しいからですか?」

「そうや! そして、アンタを倒す!!」

「‥‥‥‥いつでも受けて立ちますよ」

「――っ!!」

ニイナに成りすました誰かは、ぎゅっと拳を握った。

それを見ても、私は特に何も思わない。

「よく作戦を練って、体制を整えて、準備を万端にしてから来なさい。
 私はこの城からは滅多に出ませんから。城を探す時間を掛けても構いませんよ」

「‥‥‥‥」

「あなたがたが、何処まで知っているかは知りませんが。」

私はそういうと、答えを聞かないまま
強制的にニイナに成りすました誰かを外へと転送した。

「‥‥本当に当たるとはね‥‥」

そして、深くため息をついた。





※気が向いたら挿絵、後で挿入します。
※フィクションです!フィクションです!くしゃみの効果音ではありません(
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